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東京高等裁判所 昭和53年(ネ)1244号 判決

控訴人

佐多正規

被控訴人

小原愛子

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

(申立)

控訴人は、適式の呼出を受けながら、本件最初の口頭弁論期日に出頭しなかつたが、その陳述をしたものと看做された控訴状の記載によれば、本件控訴の趣旨は、「原判決を取り消す。本件を東京地方裁判所に差し戻す。」との判決を求めるというにあり、被控訴人は、控訴棄却の判決を求めた。

(主張及び証拠)

当事者双方の事実上の主張並びに証拠の提出、援用及び認否は、次のとおり付加するほか、原判決の事実摘示と同一であるから、これを引用する。

控訴人は、本件ソルマンの故障は小原連平の管理不十分であつたことにより生じたものであり、このような場合には、その故障は連平自身において責を負うべくこれを日本ソルペツト販売株式会社の責に帰せしめて同会社にその引取りを求めることは許されないと述べた。

理由

一当裁判所も、控訴人の本訴請求は理由がないと判断するものであつて、その理由は、次のとおり付加するほか、原判決がその理由中に説示したところと同一であるから、これを引用する。

(一)  小原連平方における本件ソルマンの故障が同人の管理不十分のために生じたことは、これを認めるに足りる証拠がない。

(二)  〈証拠〉によれば、控訴人が昭和四八年七月一七日小原連平方に設置された本件ソルマンによる収益金を取立てたことが認められるが、その後右ソルマンが故障するまでの間に控訴人主張のとおりの収益をあげ得たことまたはその主張の割合による収益をあげ得たことについては、〈証拠〉中、右ソルマン設置により多大の収益をあげうるとの広告部分は、必ずしもこれを措信しがたく、右控訴人本人尋問の結果中同趣旨の部分も採用しがたく、ほかに右事実を認めるに足りる証拠はない。

二よつて、控訴人の本訴請求は理由がないから、これを棄却すべきであり、これと同趣旨に出た原判決は相当であつて、本件控訴は理由がないから、民訴法第三八四条第一項によりこれを棄却する。

三なお、控訴人は、昭和五四年七月一八日午前一〇時の本件第一回口頭弁論期日開始の直前、当裁判所書記官室に出頭して、裁判長裁判官大内恒夫、裁判官森綱郎、裁判官新田圭一に対する忌避の申立書を提出したものの、右口頭弁論期日に出頭しなかつたことは、当裁判所に顕著な事実であり、当裁判所は、控訴人の右忌避の申立が権利の濫用にあたると判断し、右口頭弁論期日の不出頭は正当な理由を欠くものとして、口頭弁論期日を開き、控訴人不出頭のまま口頭弁論を終結したものであるが、控訴人の右忌避の申立が権利の濫用にあたると判断した理由は、次のとおりである。すなわち、

(一) 本件については、第一回口頭弁論期日が昭和五三年七月一二日午前一〇時と指定されていたが、控訴人は、同年六月一二日付準備書面において、原判決は民事訴訟費用等に関する法律別表一第四項にいわゆる請求について判断をしなかつた判決にあたるから、本件控訴状には所定手数料の二分の一の印紙を貼用すれば足りるところ、所定の手数料額の印紙を貼用したから、同法九条一項に基づきその二分の一の額の金銭の還付を求める旨申し立てたところ、当裁判所は、同年同月二八日、原判決は請求について判断していることが明らかであるとして右申立を棄却した。

(二) 控訴人は、前記第一回口頭弁論期日に先立つ昭和五三年七月四日、当裁判所裁判長裁判官安藤覺、裁判官森綱郎、裁判官新田圭一に対し、前記過納手数料還付の申立を棄却したことは裁判の公正を妨げるべき事情がある場合にあたるとして、忌避の申立をしたが、同年八月一日右忌避の申立は理由がないとして却下された。

(三) 当裁判所裁判長は、昭和五三年九月一一日改めて第一回口頭弁論期日を同年一〇月一六日午前一〇時と指定した、ところ、控訴人は、同年同月一二日裁判長裁判官安藤覺、裁判官森綱郎、裁判官新田圭一に対して、前記とほぼ同様の理由で忌避の申立をしたが、同年同月三一日右忌避の申立は理由がないとして却下された。

(四) 当裁判所裁判長は、同年一二月四日第一回口頭弁論期日を昭和五四年一月三一日午前一〇時と指定したところ、控訴人は、右同日口頭弁論開始に先立ち、裁判長大内恒夫に対し、忌避申立中に口頭弁論期日を指定したとして忌避の申立をしたが、同年二月二七日右忌避の申立は申立のような事実がないとして却下された。

(五) 当裁判所裁判長は、昭和五四年三月九日第一回口頭弁論期日を同年四月一六日午前一〇時と指定したところ、控訴人は、右同日口頭弁論開始に先立ち、裁判長裁判官大内恒夫、裁判官森綱郎、裁判官新田圭一に対し、さらに忌避の申立をしたが、同年四月二七日右忌避の申立は理由がないとして却下された。

(六) よつて、当裁判所裁判長は、同年五月三〇日第一回口頭弁論期日を同年七月一八日午前一〇時と指定したところ、右同日口頭弁論開始に先立ち、控訴人からまたもや前記のような忌避申立がなされた。

以上の経過に徴すれば、控訴人が昭和五四年七月一八日なした忌避の申立は忌避権の濫用にあたるものといわざるを得ない。

四よつて、訴訟費用の負担につき、民訴法第九五条、第八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(大内恒夫 森綱郎 新田圭一)

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